近年、多くの企業にとって電気代の高騰が課題となっています。オフィスや工場の電気代は固定費の中でも大きな割合を占めており、企業の利益率や資金繰りに直結します。
本記事では、今日からすぐに取り組める節電対策から、電力会社の見直し、さらにはデマンドコントロールや太陽光発電といった設備投資を伴う本格的な省エネ施策まで、わかりやすく解説します。
会社の電気代が高騰する背景と削減方法の優先順位

なぜ今オフィスの電気代が上がっているのか
日本の企業が直面している電気代高騰の主な原因は、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭などのエネルギー輸入価格の高騰です。これに円安傾向が加わったことで、電気料金の内訳にある燃料費調整額が大きく上昇し、基本料金や電力量料金そのものを押し上げる要因となっています。
また、再生可能エネルギー普及のために電気料金に上乗せされている「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」も、中長期的に企業の固定費を圧迫し続けています。これら外部要因により、ただ待っているだけで電気代が自然に下がることは期待しにくいのが現状です。
費用ゼロの節電対策から設備投資へステップを踏むのが鉄則
費用がかからないソフト対策から初期費用を伴うハード対策へと段階的にステップアップしていくのが基本的な考え方です。
ステップ1:即実践できる運用改善(初期費用:0円)
エアコンの設定温度見直し、不要な照明の間引き、OA機器の省エネモード徹底など、ルール作りと意識改革だけで行えます。
ステップ2:軽微な設備更新・契約見直し(初期費用:低〜中)
照明のLED化、電力会社の切り替え(新電力への移行)など、数ヶ月〜1年程度で初期費用が回収できる、または初期費用がほぼかからない対策です。
ステップ3:本格的な省エネ設備投資・創エネ(初期費用:中〜高)
デマンド監視装置の導入、空調の最新型への更新、自家消費型太陽光発電の設置などです。初期費用はかかりますが、中長期的に数百万〜数千万円規模のコスト削減が可能です。
【即実践】オフィスで効果的な照明・空調・OA機器の節電対策

オフィスの消費電力のうち、大部分を占めるのが「照明」「エアコン」「OA機器」の3つです。
照明の節電:LED化と人感センサー導入の削減効果
オフィスにおいて照明は全消費電力の約2割から3割を占めています。
- 昼間の窓際消灯と間引き
- 窓際の席は外光で十分に明るいため、日中は消灯するルールにします。また、廊下や会議室など、常時人がいない場所の蛍光灯を一部取り外す間引きも効果的です。
- LED照明への切り替え
- 従来の蛍光灯をLED照明に交換するだけで、照明にかかる電気代を約50%〜60%削減できます。さらに、寿命が約4万時間と蛍光灯の約4倍長持ちするため、交換に伴うメンテナンス人件費も削減可能です。
- 人感センサーの導入
- トイレ、給湯室、廊下、会議室など、使用頻度が不定期な場所に人感センサー付き照明を導入すると、消し忘れによる無駄な電気代をカットできます。
空調の節電:設定温度の最適化とフィルター清掃の重要性
オフィスにおいて最も電力を消費するのが空調(約4割〜5割)です。
- 設定温度の最適化(夏28℃/冬20℃)
- エアコンの設定温度を1℃緩和するだけで、目安として約10%ほどの消費電力削減効果があるとされています。環境省が推奨するオフィス設定温度を目安に、サーキュレーターや扇風機を併用して効率的に室内の空気を循環させましょう。
- フィルター清掃の徹底(月1〜2回)
- フィルターに埃が溜まると吸い込み効率が落ち、エアコンは余計なパワーを消費します。定期的なフィルター掃除を行うことで、年間で約5%〜10%の空調電気代カットにつながります。
出典:環境省
OA機器の節電:省エネ設定と不要な電源オフの徹底
- 省エネ(スリープ)モードの活用
- パソコンや複合機で一定時間操作がない場合に自動的にスリープモードへ移行するよう一括設定することで、待機電力を大幅に削減できます。
- 長期休暇時の主電源オフ
- 土日祝日や年末年始など会社が完全に休みになる期間は、複合機や給茶機、共有ディスプレイなどの主電源をオフ(またはコンセントから抜く)にすることをルール化しましょう。
【固定費削減】電力会社の切り替えと料金プランの見直し

新電力への切り替えで期待できる電気代削減効果の目安
2016年の電力小売全面自由化以降、企業は自由に電力会社を選べるようになりました。いわゆる「新電力」と呼ばれる民間企業や、大手電力会社の別プランに切り替えることで、基本料金や従量料金単価を削減できる可能性があります。
- 削減効果の目安
- 企業の規模や現在の電力契約内容によりますが、電力会社を適切に切り替えるだけで、年間電気代の3%〜10%程度を削減できるケースが多く見られます。初期費用が一切かからず、電気の品質も送電網をそのまま使うため全く変わりません。
自社に合った料金プランの選び方と切り替え時の注意点
電力会社やプランを検討する際は、自社の電力使用パターンに合ったものを選びましょう。
- 夜間稼働が多いか、日中稼働が多いか
- 24時間稼働の工場や夜勤のあるオフィスであれば、夜間の単価が安く設定されているプランが有利です。逆に、一般的な9:00〜18:00運用のオフィスであれば、日中の単価が安定しているプラン、あるいは基本料金が安いプランを選ぶのが賢明です。
- 違約金・解約金の有無を確認する
- 契約期間(1年契約、2年契約など)の縛りがあり、途中で解約すると違約金が発生するプランもあります。契約書は必ず事前に細部まで確認しましょう。
- 市場連動型プランのリスクを理解する
- 日本卸電力取引所(JEPX)の価格に連動して電気代が決まる「市場連動型プラン」は、市場価格が安い時期は大幅に電気代を抑えられますが、冬場や夏場の電力逼迫期には電気代が数倍に跳ね上がるリスクがあります。リスクを許容できる場合を除き、固定単価型または上限設定のあるプランを選ぶことをおすすめします。
【基本料金を抑える】デマンドコントロールの仕組みとメリット

デマンドコントロールとは?最大需要電力を抑える仕組み
法人の高圧電気料金の基本料金は、過去1年間の「最大需要電力(ピークデマンド)」によって決定されます。デマンドとは、30分ごとの平均使用電力(kW)のことです。
例えば、1年間のうちたった30分間だけエアコンを全開にし、すべての機械を同時に動かして「150kW」のピークを作ってしまったとします。すると、その後の11ヶ月間、実際の使用電力がどんなに少なくても、基本料金は「150kW」をベースに計算され続けてしまいます。
デマンドコントロールとは、この「30分間の最大値(ピーク)」が予め設定した目標値を超えそうになった際に、システムが検知して警告を出したり、自動的にエアコンの稼働を制御(一時的に送風にするなど)したりして、ピークを強制的に抑える仕組みです。
基本料金を大きく下げる!デマンド対策の費用対効果と削減例
デマンド閲覧・制御システムを導入するには、専用の監視装置をキュービクル(受電設備)に取り付ける必要があります。
- 導入コストと削減効果の試算
- 導入コスト: 簡易的な監視アラートシステムであれば数万円〜数十万円。自動制御システムを組み込む場合は数十万〜150万円程度が目安です。
- 削減効果: 一例として、ピーク電力を20kW抑制できた場合、基本料金単価が1kWあたり約1,700円と仮定すると、毎月約34,000円、年間で40万円以上の基本料金削減になります。多くの企業が、導入から2〜3年程度で初期費用を回収しています。
【中長期の投資】太陽光発電・省エネ設備導入による電気代削減
最も中長期的な効果が高いのが、太陽光発電システムをはじめとする省エネ設備の導入です。
会社・オフィスへ太陽光発電を設置するメリットと効果
これまでの太陽光発電は「作った電気を売る」ビジネスモデルが主流でしたが、現在は「作った電気を自社でそのまま使う」が主流となっています。導入には以下のようなメリットがあります。
- 買う電気を直接減らせる
- 自社の屋根や空きスペースに太陽光パネルを設置することで、電力会社から購入する高価な電気を直接削減できます。
- 再エネ賦課金をカットできる
- 電力会社から電気を買わないため、購入量に応じて課税される再エネ賦課金もその分かからなくなります。
- 脱炭素(CO2削減)アピールにつながる
- クリーンエネルギーを使用している企業として、取引先や株主、地域社会へのESG・SDGsアピールになり、企業の社会的価値が向上します。
初期費用はいくら?太陽光発電の導入コストと回収期間
自家消費型太陽光発電の導入にはまとまった資金が必要ですが、電気代削減効果とシミュレーションをしっかり行えば、投資対効果は非常に高いものになります。
- 導入コストの目安
- オフィスの規模やシステム容量(kW)によりますが、中小規模のオフィスビルや店舗で300万〜800万円程度、中大型の工場や倉庫では1,000万〜3,000万円以上の投資規模になります。
- 回収期間の目安
- 電気代の削減分と後述する税制優遇や補助金を組み合わせることで、設備規模や自家消費率にはよりますが、約5〜8年で初期投資を回収することが可能です。太陽光パネルの寿命は20〜25年以上と非常に長いため、投資回収を終えた後は、毎年発生する電気代削減分がそのまま会社の純利益として上乗せされ続けます。
経営層への提案に使える!電気代削減効果の比較一覧表
それぞれの対策のメリットとデメリット、コスト感を表で解説します。
対策別のコスト・削減効果・難易度のまとめ
| 対策カテゴリー | 具体的な対策内容 | 初期費用 | 削減効果(目安) | 導入の難易度 | 主なメリット・
デメリット |
| 即実践(節電) | エアコン設定変更・フィルター清掃・不要照明の間引き | 0円 | 全体の電気代の約3%〜5% | ★☆☆(極めて容易) | メリット: 今すぐ始められる
デメリット: 社員の意識維持やルール徹底が必要 |
| 即実践(節電) | 照明のLED化・人感センサーの導入 | 低(数万〜数十万円) | 照明電気代の約40%〜70% | ★★☆(工事業者手配のみ) | メリット: 確実に効果が出る、寿命が長い
デメリット: 電球・器具の購入費 |
| 固定費見直し | 電力会社の切り替え(新電力等) | 0円 | 全体の電気代の約3%〜10% | ★☆☆(書類手続きのみ) | メリット: 初期費用ゼロで基本料金を下げられる
デメリット: 契約縛りやプランの選択に注意 |
| 基本料金抑制 | デマンドコントロールシステムの導入 | 中(数十万〜150万円) | 基本料金の約10%〜20% | ★★☆(キュービクル工事等) | メリット: 基本料金を確実に下げられる
デメリット: 空調の制御などで一時的に室温が変化 |
| 中長期投資 | 自家消費型太陽光発電の設置 | 高(300万〜数千万円) | 全体の電気代の約20%〜40% | ★★★(設計・施工・申請) | メリット: CO2削減、税制優遇、防災
デメリット: 初期投資が高額、屋根の強度確認が必要 |
会社の負担を減らす!省エネ・太陽光発電導入に使える補助金制度
国や自治体は企業の脱炭素・省エネを支援するため、補助金制度や税制優遇措置を用意しています。
国や自治体が実施する主な補助金・優遇税制
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(省エネ補助金)
- 工場やオフィスビルの先進的な省エネ設備(空調、ボイラー、照明など)への更新に対して、費用の一部が補助されます。
- 二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金(環境省)
- 自家消費型太陽光発電や、それと組み合わせる蓄電池の導入を強力にバックアップする補助金です。
- 中小企業経営強化税制による優遇措置
- 指定された省エネ設備や太陽光発電設備を導入した際、取得価額の「100%即時償却」または「10%(一部7%)の税額控除」を選択適用できます。
出典:経済産業省
補助金を活用した中長期的な投資回収計画の立て方
補助金を組み込むことで、通常であれば投資回収に10年近くかかるプロジェクトであっても、5年前後にまで短縮することが可能になる場合があります。
ステップ1:公募スケジュールの確認
申請してから採択される前に契約・着工してしまうと、補助金が出なくなるため、スケジューリングは専門家のアドバイスを受けながら慎重に行いましょう。
ステップ2:複数社からの見積もり取得とシミュレーション作成
設備の導入費用だけでなく、「どれくらい電気代が浮くのか」「税金がどれくらい安くなるのか」を算出したキャッシュフロー表を作成し、経営層へ提示できるようにします。
まとめ:会社に最適な電気代削減方法を見つけよう
会社の電気代を削減するために、まずはエアコンの設定温度見直しや照明の間引き・消灯ルールといった、今すぐ全員で始められる対策からスタートしましょう。その上で、新電力への切り替えやLED化、デマンドコントロールといった、手軽で効果性の高いステップへと進んでいきましょう。
そして、中長期的に電気代高騰の波から会社を守り、企業の競争力を高める有効な選択肢となるのが「自家消費型太陽光発電」や「最新省エネ設備」の導入です。初期費用は発生しますが、国の強力な補助金制度や即時償却などの税制優遇を活用すれば、驚くほど早いサイクルで投資資金を回収し、その後の利益を大きく伸ばすことができます。
「うちのビルや工場の屋根で、どれくらい太陽光発電ができるんだろう?」「今使える補助金や制度にはどんなものがある?」と気になった方は、ぜひ複数の見積もりを比較し、専門家に相談することをおすすめします。
そらトクでは、各企業の状況に合わせた具体的な解決策や、補助金活用の最新情報を多数ご紹介しています。


