デマンドとは何か|電気料金への影響と基本料金の仕組み
太陽光発電・蓄電池をはじめとするエネルギー分野の専門家。NTTスマイルエナジーに約10年間勤務し、営業から新サービスの開発・企画まで幅広く従事。独立後は、メーカー・商社・EPC・地域新電力など、エネルギー関連企業のコンサルティングや人材育成を手がけ、現在は18社の顧問を務める。
自治体の災害時避難所への太陽光発電・産業用蓄電池の導入や、地域新電力における電源開発などの実務経験も持つ。太陽光・蓄電池の設計から事業開発、人材育成まで、エネルギー業界で培った豊富な知見をもとに記事を監修。
「電気料金の明細にあるデマンドって何?」「なぜ一度高い値が出ると料金が上がり続けるの?」デマンド(需要)の仕組みを理解することは、企業のコスト削減の第一歩です。
本記事では、デマンドの定義や計算方法、契約電力を超えた場合のペナルティ、さらには監視システムを活用した具体的な削減対策まで、分かりやすく解説します。家庭でできる節電ポイントも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
デマンドとは?【結論】
結論から言えば、電力デマンドとは「30分間の平均使用電力」のことです。そして多くの企業(高圧受電)において、このデマンドの最大値が向こう1年間の基本料金を左右します。そのため、一時的に多くの電気を使用すると、その後の電気料金が高くなる可能性があります。
ここでは、デマンドが電気料金に影響する仕組みと、デマンドと使用電力量の違いについて解説します。
デマンドが電気料金に影響する仕組み
デマンドが電気料金に影響する仕組みは、以下の通りです。

デマンド値は、瞬時の電力(瞬時値)ではなく、30分という枠内での稼働負荷の平均です。
例えば、1か月の30分平均使用電力が以下のように推移したケースを見てみましょう。
| 時間帯 | 30分平均使用電力 |
| 9:00~9:30 | 180kW |
| 10:00~10:30 | 210kW |
| 11:00~11:30 | 195kW |
| 13:00~13:30 | 230kW |
| 15:00~15:30 | 205kW |
この場合、最も高い230kWがデマンド値となり、基本料金の算定基準になります。
デマンドと使用電力量(kWh)の違い
デマンド(kW)と使用電力量(kWh)は混同されやすいですが、電気料金における役割は明確に異なります。
| 項目 | デマンド(kW) | 使用電力量(kWh) |
| 意味 | 30分間の最大平均使用電力 | 実際に使用した電力量 |
| 単位 | kW | kWh |
| 影響する料金 | 基本料金 | 電力量料金 |
| 重要になる契約 | 高圧・特別高圧契約の企業 | 家庭・企業共通 |
| 対策 | ピーク電力を抑える | 使用量を減らす |
つまり、使用電力量は実際に使用した電力量、デマンドは30分間の最大平均使用電力量という違いがあります。
デマンド値はなぜ電気料金に影響するの?

なぜデマンド値が上がると電気料金が高くなるのか、その理由は電気料金の構成と契約電力のルールにあります。ここでは、デマンド値が電気料金に影響を与える仕組みと、注意すべき12ヶ月ルールについて詳しく解説します。
電気料金の仕組み
電気料金は、大きく分けて「基本料金」と「電力量料金」で構成されています。

つまり、電気をたくさん使ったかどうかだけではなく、一度にどれだけ電気を使ったかも電気料金に大きく影響します。
例えば、同じ1日に1,000kWhの電気を使用していても、設備を一斉に稼働させてピーク電力が高い企業は、ピークを抑えている企業よりも基本料金が高くなる可能性があります。
基本料金とデマンドの関係
高圧受電では、基本料金は契約電力(kW)を基に決まります。この契約電力は、デマンド値を基準に算定されます。そのため、設備を一斉に稼働させるなどしてデマンド値が上昇すると、契約電力も高くなり、基本料金の増加につながります。
なお、企業向けの電気料金は次のように構成されています。
電気料金=基本料金+電力量料金+燃料費調整額+市場価格調整額+再エネ賦課金
このうち、デマンド値が影響するのは基本料金のみです。使用電力量(kWh)は電力量料金に反映されます。
12ヶ月適用ルール
高圧受電(契約電力500kW未満)では、「実量制」という契約方式が採用されるのが一般的です。
実量制では、当月を含む過去12か月(当月+過去11か月)の最大デマンド値が契約電力となり、その値を基に基本料金が決まります。
たった一度(30分間)でも突出したピーク電力を発生させてしまうと、その後11ヶ月間はデマンド値が下がっても高い基本料金を支払い続けなければなりません。
デマンド値の計算方法
デマンドは30分ごとの平均使用電力をもとに算出されます。計算方法を理解すれば、請求書の内容も確認しやすくなります。
基本的な計算方法
電力会社が計測するデマンド値は、以下の計算式で求められます。
使用電力量(kWh) ÷ 0.5時間(30分) = デマンド(kW)
短時間に電力が集中しないよう設備の稼働時間を調整することが、デマンド値の抑制につながります。
計算例
例えば、ある30分間の最初の15分で500kW、次の15分で300kW使用したとします。 この場合の計算は以下のようになります。
- 最初の15分:500kW × (15/60時間) = 125kWh
- 次の15分:300kW × (15/60時間) = 75kWh
- 30分間の合計使用電力量:125 + 75 = 200kWh
- デマンド値の算出:200kWh ÷ 0.5時間 = 400kW
このように、一時的に500kW使ったとしても、同じ30分枠内で使用量を抑えれば、デマンド値は抑制できます。
契約デマンドを超えた場合はどうなる?

契約デマンド(契約電力)を超えると、その月だけではなく、今後の基本料金にも長期間影響する可能性があります。ここでは、契約状況別に料金への影響やペナルティについて解説します。
500kW未満(実量制)の場合
高圧受電で契約電力が500kW未満の場合は、30分間の最大デマンド値が契約電力を上回ると、その最大値が新しい契約電力として適用されます。例えば、契約電力が200kWの企業で、一度だけ220kWのデマンドを記録した場合は、220kWを基準として基本料金が算定される可能性があります。
さらに、前述した12ヶ月ルールにより、一度ピークを更新すると、その後デマンド値が下がっても基本料金はすぐには下がりません。
500kW以上(協議制)の場合
契約電力が500kW以上の企業では、電力会社との協議によって契約電力が決められています。契約デマンドを超過した場合は、契約内容の見直しや契約電力の変更を求められることがあり、今後の基本料金が上昇する可能性があります。
ペナルティはある?
契約デマンドを超えた場合、500kW以上の協議制契約では契約超過金(違約金)が発生する場合があります。一般的には、超過した契約電力に対して、基本料金単価の約1.5倍を基準として超過料金が算定されます。
例えば600kWの契約で、620kWに超過した場合、超過した20kW× 1,700円(単価) × 1.5(ペナルティ倍率) = 51,000円が「契約超過金」として上乗せ請求されることになります。
一方、500kW未満の実量制では、違約金が発生するケースは少ないものの、一度更新した契約電力が約1年間基本料金に反映されるため、結果として年間の電気料金が大きく増加する可能性があります。
超過リスクチェックリスト
契約デマンドの超過を防ぐために、次の項目を定期的に確認しましょう。
- □ 契約デマンドと毎月の最大デマンド値を確認している
- □ 夏季・冬季の空調設備を一斉に稼働させていない
- □ 大型設備の運転時間を分散し、ピークシフトを実施している
- □ デマンド監視システムでリアルタイムに使用電力を管理している
- □ 過去12か月間で最も高いデマンド値を把握している
- □ 従業員へピーク電力を抑える運用ルールを周知している
- □ 太陽光発電や蓄電池など、ピークカットにつながる設備の導入を検討している
これらの対策を継続することで、契約デマンドの超過を防げます。
デマンド監視システムとは
デマンド監視システム(デマンドコントローラー)とは、電力使用量を24時間リアルタイムで監視し、契約デマンドを超えないように管理するシステムです。
あらかじめ設定した「目標デマンド値(管理目標電力)」に近づくと、警報や通知で担当者に知らせます。システムによっては、空調や生産設備などを自動で制御し、一時的に稼働を抑えることでピーク電力を削減できるものもあります。
デマンド監視の仕組み
デマンド監視システムは、次のような流れで契約デマンドの超過を防ぎます。
電力使用量をリアルタイムで監視
↓
30分平均のデマンド値を予測
↓
目標値に近づくと警報・通知
↓
設備の運転時間を調整・自動制御
↓
契約デマンドを超えないよう管理
↓
基本料金の上昇を防ぐ
デマンドの見える化と予測によって、電力ピークを事前に把握し、契約デマンドの超過を防ぐ仕組みです。設備の運転時間を調整したり、自動制御を活用したりすることで、基本料金の抑制と継続的な電力コスト削減につながります。
デマンド監視システムの導入コスト
デマンド監視システムの費用は、導入方法や機能によって異なります。
| 導入方法 | 初期費用の目安 | 月額費用の目安 | 特徴 |
| クラウド型 | 0~10万円程度 | 3,000~10,000円程度 | 初期費用を抑えやすく、中小企業にも導入しやすい |
| オンプレミス型 | 50~300万円程度 | 保守費用が別途必要 | 工場や大規模施設向け。自社サーバーで管理できる |
| 電力会社・設備会社のサービス | 無料~数万円程度 | 3,000~5,000円程度 | 標準取付工事費が無料のサービスもある |
近年では、初期費用を抑えられるクラウド型が普及しており、月額3,000〜5,000円程度から利用できるサービスも増えています。
デマンド監視による削減効果の目安
デマンド監視システムを活用してピーク電力を抑えることで、基本料金の削減が期待できます。
例えば、高圧契約の企業でデマンド値を10kW削減できた場合、契約内容によって異なりますが、年間約16万〜20万円程度の電気料金削減につながるケースがあります。
ただし、実際の削減額は以下の要因によって変わります。
- 契約電力(高圧・特別高圧など)
- 電力会社の料金単価
- ピーク電力の発生状況
- 設備の運用方法
そのため、導入前にはシミュレーションを行い、自社の削減効果を確認することが重要です。
企業が実践できるデマンド対策比較

デマンド対策にはさまざまな方法がありますが、削減効果や導入コストは異なります。自社の設備や予算に合わせて選択しましょう。
比較表
企業が実践できるデマンド対策を比較しました。
| 対策 | 削減効果 | 導入コスト | 特徴 |
| 蓄電池によるピークカット | ★★★★★ | 高 | ピーク時に蓄えた電力を使用し、デマンドを大幅に削減できる |
| 太陽光発電の導入 | ★★★★☆ | 高 | 昼間の購入電力を減らし、ピーク電力の抑制にも効果的 |
| デマンド監視システムの導入 | ★★★★☆ | 中 | ピークを予測し、警報や設備制御で契約デマンド超過を防ぐ |
| 設備の自動制御 | ★★★☆☆ | 中 | 空調・コンプレッサーなどを自動制御し、同時稼働を抑える |
| ピークシフト(運転時間の見直し) | ★★★☆☆ | 低 | 設備の稼働時間を分散し、一時的な電力集中を防ぐ |
| 照明・空調の運用改善 | ★★☆☆☆ | 低 | 不要な設備の停止や設定温度の見直しでピークを抑える |
それぞれの対策には、削減効果や導入コスト、適した企業規模が異なります。自社の電力使用状況や予算に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
企業におすすめのデマンド対策チェックリスト
企業では、ピーク電力を抑えることが基本料金の削減につながります。特に工場やオフィスでは、設備の同時稼働を避けることが重要です。
- □ 契約デマンドを毎月確認している
- □ デマンド監視システムを導入している
- □ 空調・コンプレッサーなどの設備を時間差で運転している
- □ 生産設備の同時稼働を避けている
- □ LED照明や高効率設備へ更新している
- □ 太陽光発電を導入し昼間の購入電力を削減している
- □ 蓄電池を活用してピークカットを行っている
これらを組み合わせることで、デマンド値の上昇を抑え、基本料金の削減が期待できます。
家庭でもデマンド対策は必要?
デマンドは「一度に使用する電力の大きさ」を示す指標ですが、家庭と企業では電気料金への影響や対策方法が異なります。
企業では、デマンド値(最大需要電力)が基本料金を左右するため、ピーク電力を抑えることが電気料金削減につながります。一方、一般家庭では多くの場合、デマンド契約ではなく従量料金制が採用されているため、デマンド管理よりも電気使用量そのものを減らすことが重要です。
まずは、それぞれの違いを確認してみましょう。
家庭と企業のデマンドの違い
| 比較項目 | 企業(工場・オフィス・店舗) | 家庭 |
| 契約形態 | 高圧・特別高圧契約が中心 | 低圧契約が中心 |
| デマンド管理 | 必要 | 基本的に不要 |
| 基本料金への影響 | デマンド値で決まる | 契約アンペア・契約容量で決まることが多い |
| 重要な対策 | ピーク電力を下げる | 電気使用量を減らす |
| おすすめ設備 | デマンド監視・太陽光・蓄電池 | 省エネ家電・太陽光・蓄電池 |
それぞれの契約形態や電気の使い方に合わせた対策を選ぶことで、効率的な電気代削減につながります。
家庭でできる電気料金の節約対策
一般家庭では、企業のようにデマンド値を管理する必要はありませんが、一度に多くの家電を使用すると契約アンペアを超えてブレーカーが落ちる原因になります。そのため、電気料金を抑えるには、電力使用量そのものを減らすことがポイントです。
チェックリスト
- □ エアコンの設定温度を適切に調整する
- □ 電気温水器やエコキュートは夜間に運転する
- □ IH・電子レンジ・ドライヤーなどの同時使用を控える
- □ LED照明へ交換する
- □ 待機電力を減らす
- □ 太陽光発電で昼間の電力を自家消費する
- □ 蓄電池を導入し夜間や停電時にも活用する
これらの対策は、毎月の電気料金の節約だけでなく、災害時の備えとしても役立ちます。
デマンド管理で「1年間の電気料金」を賢く削減しよう

デマンド値は30分間の平均使用電力であり、高圧受電では最大デマンド値が契約電力となり、基本料金を左右します。特に実量制では、一度更新した最大デマンド値が約1年間適用されるため、日頃からピーク電力を抑えることが重要です。
電力コストを削減するには、デマンド監視システムによる電力の見える化や、設備の運転時間を見直すピークシフト、太陽光発電・蓄電池を活用したピークカットなどが効果的です。
まずは自社のデマンド値や契約電力を把握し、できる対策から始めることが、1年間の電気料金削減につながる第一歩となるでしょう。
【出典元】
デマンド監視装置の選び方|単機能・クラウド連携・警報システムの比較
デマンド監視装置とは?主な機能や導入メリット・選ぶ際の注意点を解説