近年、エネルギー価格の変動や再エネ賦課金、燃料費調整額などの影響により、工場の電気代が増大しています。
本記事では、工場の電気代を下げる方法を即効性のある運用対策から設備導入を伴う中長期的な対策まで、体系的に解説します。
工場の電気代を下げる方法の全体像と取り組む優先順位

工場の電気代削減を成功させるにあたり、闇雲に対策を打ち出しても、期待したほどの効果が得られなかったり、現場の生産性に支障をきたしたりするリスクがあります。
なぜ今工場の電気代高騰が経営を圧迫しているのか
現在、多くの工場で電気代が高騰している要因は単なる使用量の増加だけではありません。主な要因は以下の3つです。
- 燃料費調整額の高騰:火力発電に必要なLNG(液化天然ガス)や石炭の輸入価格の変動が直接電気料金に転嫁されています。
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の負担:電気の使用量に応じて、年度ごとに定められた単価で加算されるため、電力消費量の大きい工場ほど負担が大きくなります。
- 契約電力(デマンド値)の上昇:一時的な電力使用のピークが基本料金の基準値を押し上げ、年間を通じて高止まりする構造になっています。
製造業において電気代は直接的な売上原価に直結するため、利益率を維持・改善するためには電気代削減対策が重要な経営課題となっています。
費用対効果と実施難易度で分ける削減対策の優先順位
効率的に電気代を下げるためには、「運用改善」「小規模投資」「大規模投資」の3段階で優先順位を設定するのが鉄則です。
| 段階 | 対策内容 | 費用 | 難易度 | 即効性 | 代表的な対策 |
| ステップ1(即実施) | 運用方法の見直し | なし〜極小 | 低 | 高 | 空調の設定温度最適化、稼働スケジュールの分散 |
| ステップ2(短期) | 高効率機器への更新 | 低〜中 | 中 | 中 | 照明のLED化、インバーター導入 |
| ステップ3(中長期) | 自家消費設備の導入 | 中〜高 | 高 | 低 | 太陽光発電の設置、蓄電池導入、高効率空調の刷新 |
まずは費用をかけずに実施できるステップ1で無駄な消費電力を削り、削減されたコストや補助金を原資にしてステップ2、ステップ3の設備更新へとステップアップしていきましょう。
即効性抜群!照明のLED化による削減効果と投資回収

工場で比較的着手しやすい対策の一つが、照明設備のLED化です。
工場照明をLEDへ切り替えた場合の電気代削減率と削減額
従来の蛍光灯や水銀灯からLED照明へ切り替えると、設備や使用条件によっては消費電力を大幅に削減できる場合があります。特に、消費電力の大きい水銀灯から高効率LEDへ更新する場合は、大きな削減効果が期待できます。
- 削減効果の試算例(水銀灯400W 50台をLED100Wへ更新した場合)
- 稼働条件:年間3,000時間稼働、電気代単価25円/kWh
- 更新前消費電力:400W × 50台 = 20kW(年間60,000kWh / 年間電気代:約150万円)
- 更新後消費電力:100W × 50台 = 5kW(年間15,000kWh / 年間電気代:約37.5万円)
- 年間削減額:約112.5万円(電気代 約75%削減)
このように、照明のLED化だけでも、設備規模や稼働時間によっては年間100万円を超える電気代削減につながる場合があります。
LED照明導入にかかるコストと投資回収期間の目安
導入費用は、器具の種類や設置環境、工事費によって大きく異なります。50台を更新する場合の初期費用は、工事条件によっては数百万円規模となることがあります。今回の試算条件では、電気代削減額だけで考えると投資回収期間は約2〜3年が目安です。
LEDは寿命が約40,000〜60,000時間と非常に長く、頻繁に球切れを起こすことがありません。高所作業車を手配して行う球替え交換作業のメンテナンス人件費・安全リスクも大幅に低減できるため、実質的な投資回収スピードはさらに早まります。
空調設備の省エネ対策と設定温度の最適化

広い作業空間の温度管理や、一定の温湿度管理が必要な工場では、空調の運用方法が電気代に大きく影響します。
今日からできる!空調設備の設定温度見直しと稼働管理
設備投資を行わずに今日から実践できる最も効果的な節電対策は、設定温度の最適化と稼働時間の徹底管理です。
- 設定温度の1℃見直し
冷暖房の設定温度を見直すことで、空調の消費電力を削減できる場合があります。作業環境や製造工程に必要な温度・湿度条件を満たしながら、過度な冷暖房を避けることが重要です。 - 室外機の環境改善とフィルター清掃
フィルターの目詰まりは空調の運転効率低下につながり、消費電力の増加や冷暖房能力の低下を招く可能性があります。設備の使用状況に応じて、定期的な清掃・点検を行いましょう。また、室外機に直射日光が当たる場合は、メーカーの設置条件を守りながら、排熱を妨げない範囲で日射対策を検討します。室外機の周囲には物を置かず、十分な通風を確保することも重要です。 - サーキュレーター・ビニールカーテンの併用
天井が高い工場では暖気が上部に、冷気が下部に滞留します。大型シーリングファンやサーキュレーターで空調効率を高めることや、出入口にビニールカーテンを設置して外気の侵入を防ぐ工夫が非常に効果的です。
中長期で大きな効果を生む省エネ型空調への設備更新
空調設備を最新のものに更新することによって消費電力を削減できる可能性があります。
最新機種は室内外の温度変化に合わせてコンプレッサーの回転数を細かく制御するため、無駄な電力消費が発生しません。初期投資は大きくなりますが、後述する補助金制度を上手く活用することで、自己負担額を大きく抑えて導入することが可能です。
生産スケジュールの見直しによるデマンド対策
高圧・特別高圧受電を行っている工場の基本料金は、デマンド値(30分ごとの平均使用電力の最大値)によって決まる仕組みになっています。
工場の基本料金を左右する「最大需要電力(デマンド)」の仕組み
高圧契約の基本料金は、過去1年間の「最大需要電力(ピーク時のデマンド値)」を基準に算出されます。
- デマンド値の決定ルール
高圧契約では、一般に30分ごとの平均使用電力の最大値である最大需要電力が、基本料金の算定に影響します。料金制度の詳細は契約している電力会社によって異なります。
つまり、全体の使用電力量(kWh)を減らす努力と同時に、「一瞬のピーク電力(kW)を押し下げ平準化させること」が基本料金の削減において大切です。
ピーク電力を抑えて電気代を削減する稼働シフトの工夫
デマンド値を抑えるための主な対策は以下の通りです。
- 設備の起動タイミングをずらす(ピークシフト)
朝一番の操業開始時に全ラインの大型モーターや空調を一斉に起動すると、猛烈なピークが発生します。大型設備の起動時間をずらすことで、同じ時間帯に電力使用が集中するのを避け、ピーク電力を抑制できる場合があります。 - デマンド監視装置(デマンドコントローラー)の導入
目標とする電力を超えそうになった際に警報アラートを発し、優先度の低い空調や照明を一時的に自動制御・停止させるシステムです。 - 重負荷作業の夜間・オフピーク時間帯へのシフト
契約している料金メニューによっては、時間帯別の料金単価を踏まえて高負荷工程の稼働時間を見直す方法もあります。
製造業・工場における電気代削減の成功事例

ここでは、工場における電気代削減のモデルケースを紹介します。
※以下は、一定の条件をもとにした試算例です。実際の削減額は、工場の設備構成や稼働状況によって異なります。
【モデルケース1】LED照明と空調見直しを組み合わせた中小工場の対策事例
- 業種:プラスチック製品製造業(従業員数:40名)
- 課題:電気代の高騰により利益率が低下。設備投資の予算が限られていた。
- 実施対策:
- 工場内の水銀灯120台をすべて高効率LED照明へ変更
- 空調デマンドコントローラーを導入し、ピーク時に空調をセーブ
- 成形機の起動タイミングをマニュアル化して平準化
- 成果:
- 年間電気代:約320万円削減(従来の約22%削減)
- 投資額:約450万円
- 回収期間:約1.4年(照明メンテナンス費用の削減分も含む)
運用改善と低価格なLED化を組み合わせることで、短期間で大きな効果と投資回収を実現した好例です。
【モデルケース2】省エネ設備導入で大幅なコスト削減を実現した金属加工工場の事例
- 業種:精密金属加工業(従業員数:80名)
- 課題:老朽化した大型空調とコンプレッサーの消費電力が大きく、デマンド値が高止まりしていた。
- 実施対策:
- 国の省エネ補助金を活用し、高効率コンプレッサーおよびインバーター空調へ全台更新
- 工場屋根に150kWの自家消費型太陽光発電システムを設置
- 成果:
- 年間電気代:約780万円削減(従来の約38%削減)
- 補助金活用により初期導入費用を40%カット
- 省エネ設備の更新や太陽光発電の導入などにより、最大需要電力が低下し、毎月の基本料金も大幅ダウン
老朽化設備の更新時期に合わせて太陽光発電と補助金を組み合わせることで、長期的な固定費の大幅削減につながる場合があります。
中長期の対策!太陽光発電と蓄電池による電気代削減
電気代の削減対策として、近年注目を集めているのが「自家消費型太陽光発電」と「産業用蓄電池」の組み合わせです。
工場の屋根を有効活用する「自家消費型太陽光発電」のメリット
自家消費型太陽光発電とは、工場の屋根や敷地に太陽光パネルを設置し、主に発電した電気を自社施設で消費する仕組みです。以下のようなメリットがあります。
- 買電量の直接削減(従量料金の削減)
工場が稼働する日中に太陽光で発電した電気を消費するため、電力会社から購入する電気量を直接的に減らすことができます。 - 再エネ賦課金の削減
自家消費した分は電力会社から購入する電力量が減るため、その分の再エネ賦課金や燃料費調整額など、購入電力に連動する料金負担を抑えられます。買電単価が上昇すればするほど、自家消費による削減節約メリットは大きくなります。 - 遮熱効果による空調負荷の軽減
屋根への直射日光を遮ることで、屋根面や建物内部への熱の侵入を抑え、夏季の空調負荷を軽減できる場合があります。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせた夜間・ピーク時の節電効果
太陽光発電単体では「夜間や悪天候時に発電できない」というデメリットがあります。これを解決するのが産業用蓄電池の併用です。
- ピークカット・ピークシフトの自動化
昼間の太陽光で発電した余剰電力や、夜間の安価な電力を蓄電池に充電。蓄電池の充放電を適切に制御できれば、電力需要のピーク時間帯に買電量を抑え、最大需要電力の低減につなげられる場合があります。 - 夜間操業・24時間稼働工場での節電
昼間に貯めたグリーン電力を夜間シフトの操業時に使用することで、24時間体制の工場でも高い削減効果を発揮します。 - BCP対策(事業継続計画)
災害や落雷による突発的な停電時にも、蓄電池から重要設備や保安電源へ電力を供給でき、生産ラインの停止事故やデータ喪失リスクを防止できます。
太陽光発電・蓄電池の導入コストと中長期的な投資回収計画
導入費用は、設備容量だけでなく、設置工事や受変電設備、制御システムなどの条件によって大きく変わります。そのため、価格や投資回収期間は一律の相場ではなく、個別の設計条件をもとに試算する必要があります。
初期費用を抑える!工場で活用できる省エネ・太陽光補助金制度
工場の設備条件や予算に合わせて、利用できる制度を確認することが重要です。
国や自治体から支給される主な省エネ設備導入補助金
設備更新(空調・照明・コンプレッサー・ボイラーなど)に対して活用できる代表的な国の補助金制度です。
- 省エネ設備の更新を支援する補助事業
年度ごとに公募内容や制度名称が変わります。高効率空調、照明、コンプレッサーなどが対象となる制度もありますが、補助率や対象設備は公募要領を確認する必要があります。
- 自治体独自の省エネ助成金
東京都や大阪府をはじめ、各都道府県や市町村でも中小企業向けに独自の手厚い省エネ助成金制度が用意されています。
自家消費型太陽光発電・蓄電池に使える最新の補助金制度
太陽光発電や蓄電池の導入においては、脱炭素化(GX)の推進に伴い、様々な補助金が用意されています。
- ストレージパリティ補助金(環境省)
2026年度にも、環境省による自家消費型太陽光発電や蓄電池の導入を支援する「ストレージパリティ」関連事業が実施されています。 - 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
地域脱炭素に関する交付金を活用した自治体の事業を通じて、地域内の事業者が再エネ導入支援を受けられる場合があります。
補助金の公募時期や交付要件は毎年変動するため、計画の初期段階から専門の施工業者やマッチングサービスに相談し、採択に向けたスケジュール調整を行うことが不可欠です。
まとめ:自社に最適な電気代削減対策をプロに相談しよう
工場の電気代を下げるためには、まず空調設定やデマンド管理といった、今日からできる節電対策に着手しつつ、照明のLED化や高効率設備への切り替えを進めることが基本方針となります。
そして、中長期的に電気代高騰リスクから自社を守り、大幅なコスト削減と脱炭素経営(DX/GX)を両立させるためには、自家消費型太陽光発電や蓄電池の導入が効果的な選択肢となります。
「自社の屋根でどのくらい発電できるのか」「太陽光発電や蓄電池でどれくらい電気代が安くなるのか」「活用できる補助金はあるか」といった疑問をお持ちの方は、実績豊富な専門業者に相談し、自社専用の試算比較とシミュレーションを行うことから始めましょう。
工場への太陽光発電導入や、自社が補助金の対象になるか詳しく知りたい方は、まずは複数社の見積もりやプランを比較検討してみてはいかがでしょうか。詳しくはそらトクのコラム一覧をご確認ください。


